中村蓉『ジゼル特別ver.30分版』(配信動画)

2020年4月25日(土)14時から40分程度、中村蓉『ジゼル特別ver.30分版』がYouTubeでライブ配信された。本来は舞台公演として予定されていたものが、「自粛」のためにこの形となった。

動画の冒頭と最後で中村氏が「生」で登場し、あいさつと締めの言葉を述べる。本編は、数時間前に撮影したものを流す、というもの。だから「ほぼ生配信」とのこと。

視聴していて最も気になったのが、ロケーションだった。都内(?)なのかもしれないが、広くて古い一軒家で、木造と思われる。たぶん遺影が飾ってあったり、仏壇もあったりしたかも?畳の部屋とか、レトロ感満載。そのわりに、現代の洗濯機が台所に置いてあったりして(たぶん)。

最後に中村氏が語ったところによると、この家は来月、5月中旬に取り壊されることが決まっているらしい。まだ人が生活している気配が残っているように見えたのに(確かに物がなくて片付いてはいたけど)、引き取り手がいないのだろうか?中途半端な情報を得て、ますます気になる。

次に気になったのが、家の数カ所に、紙に書いて貼られていた、ヴァージニア・ウルフの小説『ダロウェイ夫人』からの言葉と、音楽だ。ウルフは、もともと好きだから。選曲はさすがで、全体としてのつながりもよかった。音響はどうやっていたのだろう。レトロなレコード風に音を響かせていたのは、実際にそういうオーディオ機器を使ったのか?これも気になる。

踊りは、最初の自然の中で戯れる無邪気な様子のジゼルとか(窓からの自然光がよかった、雨の日だったら、印象がまた違っていただろう)、後半の広く動いて踊り回るジゼルとか、楽しそうでよかった。

中盤でウィリ(精霊)の女王ミルタをスナックのママ(?)風に演じ、せりふを言う。ジゼルは別のスナック(?)のママで、友人だという。そのジゼルがアルブレヒトに裏切られていたことを知り、悪態をついている動画を、タブレットで見せながら話す。そのときのミルタの「モノマネ」のネタがなんなのかが分からなかった・・・。

振付はややバリエーションに欠け、「おっ」と思わせてくれるところがあまりない。ダンス自体も、見ていてあまり喜びを感じられず、身体とダンスが魅力的にもあまり見えない。好みの問題だろうか?

作品として、解釈とかいろいろ考えて構成したのであろうとは思うが、振付と踊りに少し限界を感じてしまう。この作品のジゼルはどういうジゼルなのだろうとか、考える気が起こるところまではいかなかった。

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