「Von・noズ×天野絵美(あまた4人)」六行会ホール

Nextream21 2018 優秀賞受賞記念公演。

Von・noズ(上村有紀、久保佳絵)、天野絵美(あまた4人)。

若手の振付家・ダンサー2組による公演。上演時間:計1時間40分。


■天野絵美(あまた4人)「fruity!」

振付・出演:天野絵美/出演:樋浦瞳、南帆乃佳、屋代澪

果物をイメージした作品。肉体が、ぷるんっ、ふわっ、じゅわ~と、とろけ、はじける。時に声も使って、全身で表現する。

4人それぞれ個性的で、表したい気持ちは伝わってくるし、ちゃんと作ってあるようには見えるのだが、特にガシッと胸をつかまれるような瞬間はなかった。


■Von・noズ「前菜×黄金色になるまで」

振付・構成:上村有紀/振付補佐:久保佳絵、髙橋沙耶、藤井咲恵/衣装:佳乃

出演:公募で集められたシニアダンサー(上村静枝、久保緑、国友幸子、酒井文江、谷口薫、寺﨑恵子、三浦浩子)

上村有紀さんの修士制作「身体トレーニングを積んでいない素人を対象にしたダンス作品『黄金色になるまで』」(2015年9月)に出演した高齢者たちが、上村有紀さんの大学生時代の作品で学生たちが踊った『前菜』(2012年3月)を踊る。

食卓を思わせる横長のテーブルのような台を前に座っているダンサーたち。手や腕、首を動かし、テーブルクロスのような布を持ち上げて脚を動かす。だんだんと立ち上がる動きも入ってくる。

表情はなるべく無表情。繰り返しの動作も多く、横を向いたり、手を隣の人の肩に置いたり、脚を組み替えたりなど、「日常的」な動きが多い。特別な意味が込められた動きではないだろうに、一連の動きが何かを表現したいであろうダンスに見えてくる。

いわゆるダンステクニックを駆使した動きではないが、ビシッとタイミングを合わせて切れ味よく動くこと、長い作品ではないが全ての動作を間違いなく覚えることが、ダンスの訓練を受けていない人にとっていかに大変か、努力が必要だったか、たくさん練習したか、想像できる。

さりげなく見える動きの積み重ねでダンスを創作した振付家と、その振付を見事に作品として踊っていたダンサーに、心からの拍手を贈りたい。

幕が下りた後、その幕に、出演者たちの感想と思われる言葉が映し出された。その間に舞台では次の作品のセットが設置されていたらしい。


■Von・noズ「マザー・グース」

振付・構成・出演:上村有紀、久保佳絵/テキスト:山内晶(キリグス)/衣装:佳乃

英語圏のわらべ歌、Mother Goose(Nursery Rhymes)をモチーフにした長編デュオ。これまでのVon・noズの短編作品が含まれているらしい。

「前菜×黄金色になるまで」を見た時点でかなり期待が高まっていたが、その期待が裏切られることはなく、冒頭の、足でリズムを取るところから、ラストで「シッ」というように指を口に当てて暗転するところまで、ずっと鳥肌が立っているほど感銘を受けた。

もし私にダンスの才能があったら、こんな作品を作りたい。そう思うほど趣味のぴったり合う好みの作品だった。あの世界観がクセになりそうで、一気にファンになりそう。

幕が上がると、中央奥に山のような形に組み立てられた木の板、左右に金属のはしごが置いてあり、自然の中の子どもの遊び場のようだ。板の山に立っているダンサーが、足を板に打ちつけてリズムを刻む。そのリズムに重なるように音楽が流れ出す。ダンサーは足で拍子を取り続け、もう1人のダンサーが手前で踊り出す。

衣装も、古びた絵本から抜け出たようで、想像をかき立てる。途中、服を舞台に置いていったり、それを後から拾っていったりし、服を1枚脱ぐ場面もあった。

音楽は、歌と、クラシック音楽のような曲があった。バレエの曲もあったのだろうか?そう思わせる曲では、少しバレエっぽい動きもあった。

2人が絡んで踊ることはあまりなく、それぞれで踊ってはいるが、1人が子どもでもう1人が物語を操っているような、『くるみ割り人形』のクララとドロッセルマイヤー、あるいは『ハーメルンの笛吹き男』の笛吹き男と子どものような関係性を感じた。いや、それとは違うか。魔法使いならぬ「物語使い」と、その物語の中で踊りそして大人へと成長していく子どもの姿、のような。子どもの夢の中の情景のような。粗筋はないが、物語性がある。

踊りは、確かなテクニックと自由が共存し、奔放にはなり過ぎず抑制が利き、時折意表を突くが見ていて心地よい。ずっと見ていたい。天才だと思います。

「テキスト:山内晶」とあるが、言葉は使われていなかった、と思ったら、山口さんのTwitter投稿によると、言葉は使っていないがテキストを身体化しているということらしい。山口さんがそのテキストがインターネットで公開していた。

この「マザー・グース」はぜひ再演してほしい。Von・noズの他の作品も見てみたい。今後にも大いに期待している。


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4月20日(土) 18:00

4月21日(日) 14:00|18:00

一般 3,000円

高校生以下 2,500円

(当日券は各300円増し)

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