「セッションハウス・アワード2019 ダンス花 vol. 30」神楽坂セッションハウス

ダンスのクラスやワークショップを開講し、スタジオで公演も開催する東京・神楽坂のセッションハウスで行われた、フレッシュなダンサー5組の公演。

セッションハウスでは毎年、「ノンセレクト」の公演を行い、その中から上・下半期で各5組の「もう一度見たいダンス作品」を選出。それが「セッションハウス・アワード ダンス花」で、さらにその中から「セッション・ベスト賞」1組を選んでいるのだそう。「セッション・ベスト賞」の審査員は、セッションハウスでダンスクラスの講師も務める近藤良平氏、松本大樹氏、伊藤直子氏。

「セッション・ベスト賞」の過去の受賞者には、第1回の2012年に中村蓉氏、第2回の2013年に小暮香帆氏、第3回の2014年に鈴木竜氏と、その後の活躍が目覚ましいダンサー・振付家がいる。

初めて「ダンス花」の公演を見て、どの作品もとても楽しめた。身体能力やテクニックもしっかりしているし、それぞれに今、表したいことを模索しながら振付に挑んでいるように見えた。比較的若い人たちが意欲的に作品を創って発表している姿を見られるのは喜ばしい。


■甲斐ひろな『プリティ・ヴェイカント』

タイトルはpretty vacantだろうか、「かなり空(くう・から)の」の意味?空気を吸ってはいて苦しそうにする場面も。冒頭から引き付けられ、表情も体の動きも魅力的だ。曲のせいかイタリアンコメディ(?)のような趣もあった。もっと見たいと思った。実験しながらいろいろな作品を創っていってほしい。「横浜ダンスコレクション2019 コンペティションII」のファイナリスト選出作品。


■大塚郁実『謝歌』

最初、ずっとほぼ同じ場所に座ったまま、腕を回転させたりして、体全体が時計のように見える。その後、徐々にフロアで動き出して、軟体動物のよう。それから動きに骨格が見え始めて、変化(へんげ)していくようだ。時折、合図のように時報のような音が鳴り、最後はオルゴールのような短いメロディが流れた。「時間」というテーマが思い浮かぶ。


■神田初音ファレル/ FREEDOM RIDER『社会の窓』

「横浜ダンスコレクション2019 コンペティションII」の「奨励賞」受賞作品。東日本大震災などの災害を、東京オリンピックで「帳消し」にしようとでもしているのではないか?という問題意識を提示する。社会的なテーマを扱っているが、身近なところから感じ取ろうとしていることが伝わる。災害を伝えるニュースのアナウンサーの声を使っているのも効果的だ。床から拾い上げて左手の薬指にはめた指輪は、今はいなくなってしまった大切な人の象徴だろうか。最後、観客に背を向けて寝転がって、目には見えない、隣に横たわっている誰かを優しくなでるようなしぐさに、思わず涙。ラストで暗転後、また指輪が床に置かれていて、その指輪を見つけて、手に取る。もう大切なあの人はいないのだと気付いたように。悲しみと怒りと寂しさがグングンじわじわ感じられた。


■武田摩耶『View』

音楽の使い方がややセンチメンタル(感傷的)だが、それも含めてきれいな作品。歌などの音楽のほか、フランス語のナレーションと英語のナレーションが入る。フランス語の方は、たぶん全て「彼は~」という文。「彼は電話する」「彼はフランス人だ」「彼はパリにいる」というような(間違っていたら失礼)。英語の方は、履歴書や入国カードや入国審査で求められるような項目の羅列。「名前」「生年月日」「生誕地」「職業」とか、そういうのだったと思う。そのためもあって、異国の暮らしを思った。ラストは少しクリシェ(決まり文句のような)かなと思ったが、全体的に好みの作風。


■安心院かな・石原一樹『Nega-陰-』

この作品だけ、ソロではなくデュオ。演劇やダンスのワークでよく行われる「ミラー(鏡)」のような動きで始まる。引かれるけど突き放す、一緒にいたいけどいたくない、といった相反する感情や関係を表そうとしていることは伝わる。クラシックバレエの基礎がしっかり体に入っているんだなというのが分かる。しかし、バレエの基本の動きをつなげて新作の振付として成り立たせるには生半可ではない力量が必要だと思う。それがなければ、途端につまらなく見える。ただ、後半、座っていた女性が立ち上がって、2人で再び踊り出してからはだいぶ良かった。ここから発展する可能性があるかもしれない。


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【日程】2019年2月23日(土) 16:00/19:00

【料金】前売2,600円 当日2,800円

上演時間:約1時間30分

主催・制作:セッションハウス企画室(伊藤孝・鍋島峻介)

プログラムディレクター:伊藤直子

共催:㈱セッションハウス

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※下記画像は下記サイトより。

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