コンテンポラリーダンスの楽しさを多くの人に伝えてきたダンスカンパニー「コンドルズ」を、振付家・ダンサーの近藤良平氏が始めた場所、神楽坂セッションハウスのスタジオで、近藤氏の振付による作品など5作品が上演された。
上演中、袖に近藤氏とトークゲストが座ってダンスを見ていて、1つの作品が終わるごとに、コメントをする。私が参加した会のゲストは、漫画家の槇村さとる氏だった。『ダンシング・ゼネレーション』や『N★Yバード』をはじめとする、特にダンスやフィギュアスケートの槇村氏の漫画を、子どものころ古本で買って繰り返し読んでいたので、ご本人を目の前にして、ドキドキした(笑)。
■TABATHA「メロディーフェアー」
振付:近藤良平
出演:TABATHA(岡本優、工藤響子、柴田菜々子、四戸由香)
「横浜ダンスコレクション2019 コンペティションI」で「振付家のための在日フランス大使館賞」を受賞した、全員大きな黒縁眼鏡が特徴の実力派若手ダンスグループ、TABATHAに、今回は近藤氏が振り付けた。
笑いの要素も含んだコミカルな作品。動くわ動くわ、軽快で楽しいが、少し「動き急いでいる」ような印象もあった。
■柿崎麻莉子「The stillness of the wind」
振付・出演:柿崎麻莉子
以前に一度、柿崎氏のダンスを見たときはあまり感銘を受けなかったのだが、今回のソロ作品には完全にやられた。
すごい。すご過ぎて、毎晩、お風呂上がりや寝る前に拝ませて(踊って見せて)ほしいくらいだ。
冒頭、真ん中にいる柿崎氏に薄ぼんやりと丸いスポットライトが当たり、一瞬、裸なのかとドキッとする。実際は、ベージュのレオタードで、レオタードと体の間に鮮やかな生花を数輪挟み込んでいる。
最初は無音で、悩ましげな声を時折上げ、身もだえするように体をくねらせる、ため息をつく。天を仰いだり、髪に手をやったりする。表情や身体の赤裸々な表現に、女性の秘め事をのぞき見しているような心地になる。
後半は音楽がかかり、少し動きが大きくなる。しかし、基本的には突っ立った格好で、足を動かしたり、移動したりする振付だ。しかし、全く見飽きない。無音もいいが、音楽がかかってからの踊りもかっこいい。
ずっと見続けていたい、また見たい!
■酒井亜矢・白髭真二「TOUCHOU」
振付・出演:さかい to しんじ(酒井亜矢・白髭真二)
初めて見たダンスユニット。
タイトルは「盗聴」らしい(笑)。なぜか脚だけ出し、黒のブルマー(?)、黒のパーカー(フードをかぶって、きっちりファスナーを締めて、耳や口元を隠している)、黒のサングラスの男女2人組が現れる。
小道具にスマホを使い、怪しい行動のあと、2人の会話が音声で流れ、それに即した動きをする。「私たち、盗聴されているんじゃない?」といった会話。少し、クリスタル・パイトの「The Statement」みたいではないか?!
最後は、フードやサングラスを取り、踊る。
なんか、おかしい、笑える。クセになりそう。
■近藤良平「おとこの一生」
振付・出演:近藤良平
観客に銃を構えるポーズを取らせ、その銃に近藤氏が撃たれるところから始まる(笑)。
赤ん坊から、年を取って死ぬまでの人生を、駆け巡る。ラグビーボールを抱えて、観客席に踏み込んできたときは、どうしようかと思った(笑)。
ラスト、死んだ場面でかかっていた音楽は、「マタイ受難曲」らしい。なぜか、しんみりと涙ぐむ(!)
ばかばかしくもあるのに感動させてしまう、特異なパワーにあふれている。
■笠井瑞丈×上村なおか「かませ犬」
振付:近藤良平
出演:笠井瑞丈×上村なおか
以前に近藤氏がこの2人に振り付けた作品だという。
上村なおか氏のダンスは見たことがあるが、それらは静謐な感じだったので、この作品のコミカルな踊りは意外で、楽しかった。表情も豊か。
犬が飼い主を慕うように男性が女性を慕っていたのに、最後は逆に女性が犬のように飼い主の男性を追い掛ける構図になってしまう、というストーリー仕立て。ちょっと、シェイクスピアの『真夏の夜の夢』を思わせる。
実際にこのカップルはたぶんカップルなんだろうと思って見ていたら、やはり実際に夫婦らしい。
近藤氏の振付を完全に自分たちのダンスにしていて、とてもすてきだった。2人の関係性も好き。見ていて、なんだかうれしくなる。
10月26日(土)19:00
10月27日(日)14:00/18:00
神楽坂セッションハウス
前売一般3,300円 前売学生2,500円 前売こども1,500円
4回券10,000円
当日+500円
インタビュートークゲスト
10月26日(土)19:00 藤本靖(整体師)
10月27日(日)14:00 柳沼博雅(デザイナー)
10月27日(日)18:00 槇村さとる(漫画家)
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