「地域創造フェスティバル2019」
2019/7/30(火)、7/31(水)
会場:東京芸術劇場(東京・池袋)
主催:一般財団法人 地域創造
共催:東京芸術劇場(公益財団法人 東京都歴史文化財団)
<地域創造設立25周年記念シンポジウム>(7/30(火)10:30-12:30、シアターウエスト)
「2021年以降の地域社会とこれからの公立文化施設――少子高齢化、福祉と向き合う劇場・ホールの事例から」
・OiBokkeShi×三重県文化会館:「介護を楽しむ」「明るく老いる」アートプロジェクト
・北九州芸術劇場×北九州市身体障害者福祉協会:「レインボードロップス・ダンスプロジェクト」
■モデレーター吉本光宏氏(ニッセイ基礎研究所 研究理事)
オリンピック・パラリンピック文化プログラム
・Tokyo Tokyo Festival:公募、政府から1件2億円の助成、13件採用、屋外のプロジェクトが多い
東京2020大会・文化オリンピアード
・地域でやらないなら、きっぱりとそう宣言する
・やるなら、「地域と未来のための」文化プログラム、インバウンド戦略として
・圧倒的な市民参加例:さいたま1万人のゴールドシアター
レガシー:特に、人材の養成と、続けるための文化政策
文化芸術基本法(2016年)
スポーツ基本法(2011年)
・老いても、文化とスポーツで豊かで元気な国づくり、成熟社会の新たなモデル
東京2020大会:多様性、共生社会
公立文化施設を取り巻く社会・経済環境の変化:
高齢化、教育環境の問題、少子化、人口減少・過疎、障がい者、LGBT、在留外国人、貧困、SDGs、経済(GDP)
■菅原直樹氏(俳優・介護福祉士/「老いと演劇」OiBokkeShi主宰)
認知症と演劇、「演じる介護」
否定しない。認知症の人の世界に、介護者が寄り添って、求められる役を演じると、両者が楽しく過ごせる可能性がある。
舞台での演劇公演も行う。
アートプロジェクト、劇団「OiBokkeShi(オイ・ボッケ・シ)」:「介護を楽しむ」「明るく老いる」
・お年寄りはいい俳優、介護者は俳優になった方がいい。
・老いると、個性が煮詰まって、味が出る。人生経験もたくさん。
・介護を通して、生きること、コミュニケーションについて考えさせられた。
・高齢者との演劇制作、介護者の演劇体験。
・最初は高齢者向けのワークショップから始めた。認知症の妻を介護している俳優志望のおかだただおさんとの出会い。今は93歳で毎年1回演劇公演。→徘徊をテーマにした、商店街を歩き回っての演劇パフォーマンス、商店街の人たちに自分の役を演じてもらった。
・「老人ハイスクール」という演劇作品。学校のごっこ遊び。元教員が先生役。認知症の人とそうでない高齢者が一緒にごっこ遊びをする。
・年を取るとできなくなることもあるが、増す価値もある。舞台芸術などをきっかけに、心が躍ることもある。
■松浦茂之氏((公財)三重県文化振興事業団 文化会館副館長兼事業課長)
・アートのファンづくりを目指してきたが、「アートによって(by art)」社会貢献するニーズが高まってきた。
・「社会的課題を解決する」という言い方はおこがましいのでは?「社会課題と向き合う」。
・社会的課題の中でも、高齢者を対象に選んだ。日本社会全体の、みんなの問題なので。松浦氏自身も、母と祖母の幸福ではない介護の体験があった。
・福祉の専門家と、演劇などアートの専門家は、一緒にプロジェクトを行うことに対して、最初は障壁もある。
・高齢者を対象に演劇をするのは、高齢者の性質などから難しいのではと当初は予想。
・少なくとも3年は続けるという長期的視点で始めた。
・大学や県の紹介で特別養護老人ホームなどで行い、人脈でどんどん依頼が増えていき、1年目から順調に広まった。
・ファシリテーターも増えていって、やっていけそう。
・アウトリーチの公演も行っている。
・県外へ広めることも始めている。
・当初の計画の3年間は今年で終わりだが、現時点であと10年は続ける計画。
■セレノグラフィカの隅地茉歩氏と阿比留 修一氏(ダンサー・コレオグラファー)
・レインボードロップスプロジェクト:「不揃いの美しさ」
・「踊るの大好き」「私も踊っていいんだ」「ママを脱ぎます」:「障がい」のある自分の体で踊るのが好き。ダンスは、手足を大きく動かすことだけではない、と気付かせてくれた。/最初は子どもの付き添いで来ていた親が、自分として踊るようになり、子との関係性も変わっていった。
・「雑多な情報の少ない身体」:最初から「脱いでいる」身体。そういう身体と出会うと、「自分もいろいろ脱ぎ捨てようかな」と思える。障がいの有無や種類はそれぞれあるが、ただ、そこにある身体で踊るだけ。
「繊細さのゆくえ」コミュニティーセンターでの「じぶんみがきダンス」京都市、2016年~:
・就労しづらい若者たち。雑音を出していない、静かな、何かで固めている身体。
・体を緩める。
・仲間に体を預けることで、「一人ではない」。
・体をまずリラックスさせることで、心が付いていく。
・繊細さを保ったまま、タフさを身に付けられたら、「冬眠」から外に出る日が来るのではないか。
・ダンスならではの障がい者との向き合い方
・プログラムの組み立て方:ファシリテーターが、勝手に限界を決めない。すぐに「成果」を求めるのではなく、まず投げ掛けてみて、じっくりと「待つ」。
■龍 亜希氏(北九州芸術劇場プロデューサー)
・レインボードロップスは2013年から。
・アーティストに北九州に来てもらい滞在してもらうので、その際に教育施設などで活動してもらったのがきっかけ。人と人、人と街をつなぐ。
・長期的に行う。
・地域の文化拠点になりたい。
・子ども食堂、高齢者施設でも行った。
・現在は、身体障がい者の団体と引き続き行っている。
・「協同」の大切さと難しさ。
■ディスカッション
・松浦氏が言っていた「for artからby art」へ、は、「解決」ではなく「向き合う」こと。認知症は治らないが、「変化」が起こる。
・松浦氏:「介護を楽しむ」体験活動:看護師、介護士、介護士を目指す学生(外国人も多い)、認知症の家族会の人たちが参加すると、意識が変わるのが見える。
・演劇をやりたいという人で集まり、青春時代の学校の文化祭のような演劇活動へ。
・菅原氏:ある高齢者施設のスタッフのルールは「高齢者にうそはつかない」。演劇ワークショップで、「時にうそをついて、受け入れるのもいいではないか」。幸せな記憶を否定して、現実を突き付けることはないのではないか。
・阿比留氏:レインボードロップスに来た小学校高学年の男の子。ラジカセをかけるのが好きなので、その係を任せてみた。「舞台監督」を任せたら、テレビに出演して話すまでに。その子の母親はもっと大きく変わって、自身が踊るように。家族、介護者など周囲の人の変化も大きい。
・隅地氏:公演を、出演者の知り合いの障がいのある方も見に来る。すると、そこでもらったチラシを見て、いろんな公演やワークショップに行くきっかけにもなる。
・劇場が福祉などに関わる上で、障がい者団体などとのパートナーシップが重要?→介護スタッフなどへの最初の「インリーチ」が重要、ワークショップをやってしまう。そこでの出会いから、一緒にやっていけた(北九州市身体障害者福祉協会アートセンター・センター長の藤岡 保氏)。
・隅地氏:北九州在住のダンサー今村貴子氏や、障がい者団体の協力があって、継続的に実施できる。参加者にとっては、一過性のものではないので、実施者が変わっても継続していけるのが大事。
・菅原氏:介護はクリエイティブ。介護する相手の、一人一人の体験や状況に応じて、役割を与えることも大切。
・松浦氏:かつて、認知症は治ると思い込んで、祖母に間違ったアプローチをしていた。菅原さんの活動を知ったのは大きな価値転換。年老いて、酒やパチンコしかしなくなる、という以外の生き方を広めたい。年老いても、演劇などに燃えることもできる。こういう芸術活動の「効果」の伝道師になりたい。
・障がいや病気と「共に生きていく」。福祉とアートの関係は?
・菅原氏:演劇で福祉(介護)を豊かにし、福祉(介護)で演劇も深みを増し、新しい演劇を作りたい。
・松浦氏:by artばかり言われる動きもあるが、for artの芸術作品も作り出してこそ。
・阿比留氏:アーティストとして障がい者にアプローチしている。障がいをハンディではなく価値と捉えている。腕がないからこそ、足で踊る美しさもある。互いに良い作品づくりをしたい。
・隅地氏:障がいのある方がファシリテートする未来が来る、障がいがあるからということが特に言われない社会になる、ことを信じたい。
・龍氏:芸術は人の個性を引き出せる。劇場として芸術作品を作り見せていきながら、「共に生きる」活動もしていきたい。
・劇場は「生き方を考える」場所。芸術や、高齢者や障がい者との芸術活動は、価値観の転換を促す。
・「オリンピック、パラリンピック後」を今から見据えて活動しなくてはいけない。
<ダン活プレゼンテーション>(7/30(火)13:30-17:10、シアターイースト)
・公共ホール現代ダンス活性化事業の登録アーティストであるダンサー・振付家による、1人25分のダンスパフォーマンスとワークショップのデモンストレーション。
・個人的な好みとしては、パフォーマンスが素晴らしいのは北尾亘氏と白井剛氏、それにおそらく康本雅子氏も。これも個人的な好みとして、好きなタイプのワークショップは、マニシア氏、白井剛氏、康本雅子氏、田村一行氏。田村氏は舞踏だが、舞踏系のワークは、舞踏家でないダンサー・振付家も取り入れていることがあり、舞踏作品の「白塗り」のイメージとは異なり、どの人も入り込めて感じるところがあるものになることが多いように思う。
■長井江里奈氏
・ワークショップでは、踊りを生む、コミュニケーション(他者への信頼→自分を信じる)。
・ペアになって、1人が目をつぶり、もう1人がその人の肘を持って、体全体を動かしていく。ウォームアップ。
・目をつぶった人をつついていたずらしながら動く。危ないときは守る。相手に触り合ったら、役割を交代。
・いずれも、ピアノの生演奏で、演奏が一時的に止まったら、動きを止める。
・動きの中で、パートナー交代もあり。
■北尾亘氏
・9月に北九州芸術劇場で初演する「UMU -うむ-」の抜粋パフォーマンス。
・ワークショップは、ストレッチ、そして日常の動きからダンスへ。朝、起きてからの動き。
・音楽をかけて、つなげてやってみる。
■マニシア氏
・パフォーマンスは、「目をつぶって・・・」という声での導きがイントロ。
・赤ん坊から高齢者まで、福岡でワークショップ。
・認知症の人。座ったままできる。本人の体験から作る。
・車いすを使って。
■中村蓉氏
・彫刻ワークショップ。「考える人」「ノルウェイと少年」「※木の抽象彫刻」の写真を見てその形をペアで作ってみてから、架空の彫刻のお題「愛と憎しみ」を伝えて、参加者が自由に形を体で作ってみる。
・歌謡曲スイッチ。歌謡曲の歌詞、世界をダンスで表現。
■白井剛氏
・ワークショップ:スプーン。スプーンの重みで手が下に行き、全身の力で、体全体で、スプーンを持ち上げる。スプーンと自分の力を拮抗させながら、動かす。スプーンの抵抗に逆らわずに、スプーンを載せた手を大きく動かす(スプーンを落とさないように)。
・スプーンなしで、スプーンの余韻を感じながら、動く。
・ティッシュペーパー。2枚重ねをはがして、1人1枚を持って、重さを感じる。手に持って、下へ沈む。空気の質感を感じる。落とさないように、動く。座って動かす。他の人とティッシュを交換する。
・一部の人がティッシュを持ち、持っていない人の周りで動かして、持っていない人にティッシュを渡す。
・ティッシュがあるつもりで動く。体のいろんな場所に載せたつもりになったり、飛ばして拾ってみたり。
・物を使って、それをヒントに動きを作っていく。プロダンサーの動きのクオリティを上げることにも使えるし、ダンスをしたことのない人に動きの必然性を与えることにも使える。インプロへ。
・パフォーマンスは、水の入ったペットボトルを使って。
■藤田善宏氏
・ストーリーダンス。ノンバーバル。小道具も使う。
・ワークショップは、A4の紙を使って。体に当てて、落とさないように動く、走る。
・紙なしで、「エアペーパー」(エアギターのように)。
・2つ折りにした紙を本代わりに。ペアで、本を取る。自由に動いて、本を取り合う。
・紙は丸めるとボール、切れば紐に。見立てからストーリーへ。
■康本雅子氏
・ワークショップで、最初は脱力。顎を緩めて、振る。頭の重みを感じて、下に垂らしていく。そのまま寝転がる。左右にゆらゆら。腰を揺らして全身を動かす。足の爪先を床に着けて、背骨と首を縦揺れ。
・寝転んだまま、左右に丸まり、上に開く。「パカーン」と声に出して。
・寝転んだまま、伸び。右肘と右膝、左肘と左膝をくっつけて、反対側の脇腹を伸ばす。
・うつ伏せで、トカゲ歩き。「古い脳」を使う。
・ハイハイ。人と出会ったら、頭のつむじをイタ気持ちいいくらいに押し合う。
・四つん這いで、骨盤を丸めて、反らす、を繰り返す。背骨も使って大きく首を回す。
・お尻を上げた四つん這いで歩く。歩幅を変える。右手を上へ、左足を上へ、左手、右足。手足を床に着けてひっくり返ったりしてみる。床で両手と両足を近づけて、お尻を左右に振る。
・丹田から力を出す、コミュニケーションへ。
■田村一行氏
・踊りはどこにあるか。田植え、歩行器で歩く高齢者、子どものためにおにぎりを握る親。
・表現しようとしないところに表現がある。
・りんごの個性。「悲しみ」を、想像を広げて実感する。「うまくやろう」と思わない。
・ミミズが口の中に100匹。鼻から脳を通って・・・。
・口の中に太陽が入っている。胃から馬が出てくる。信じ込んで、やる。
・立って、頭からつられて、落とされた感じ。腰を落として、水の入ったお盆を両手で前に持っているイメージで、すり足で前進。へその辺りを引っ張られているイメージ。後ろに自分のこれまでを背負っているイメージ。
・大事なものを何かイメージして持つイメージで、気持ちや時間もそこに入れて、すり足で歩く。
・手をたたく音で、動きを止める。
・大事なものが崩れていくイメージ。自分も崩れていく。遠くへ行ってしまう。
・獣になるポーズ。
・音楽をかけて、つなげて行う。最後はゆっくりと自分の中に獣が入っていく。氷の獣が太陽の光で溶けていく。
・大駱駝艦のメソッド。自分の内と外に目を向ける。自分でも気付いていない、大切なものを見詰め直す。
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