横浜ダンスコレクション2019「ダンスクロス(Dance Cross)」として上演された2作品のうちの1つ。
日本初演。
「ダンスクロス」は、横浜ダンスコレクション「コンペティションⅠ」の「若手振付家のための在日フランス大使館賞」受賞者と、2018年度ヴィラ九条山レジデントのフランス人アーティストによる作品を上演するもの。アンスティチュ・フランセ日本とのパートナーシップによって開催。
2.15 [fri] 19:30 2.16 [sat] 15:00 2.17 [sun] 15:00
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振付・出演・テキスト・イメージ:ナッシュ
舞台美術・照明デザイン:エマニュエル・テュソール
技術監督・サウンドデザイン:エマニュエル・テュソール
製作:Nach Van Van Dance Company
制作:MANAKIN(ロラン・ボワイエ&レスリー・ペラン)
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ナッシュさんは、ストリートで「クランプ(krump)」というダンスを学んでから、コンテンポラリーダンスも学んだのだそう。クランプというジャンルは初めて耳にした。デヴィッド・ラシャペル監督のドキュメンタリー映画『RIZE-ライズ-』で描かれているらしい。
横浜ダンスコレクションの下記サイトによると、
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※クランプ(krump)は、全身を大きく使った、パワフルで威嚇するような動きを特徴としたダンス。ストンプ(足を踏み付ける)・チェストポップ(胸を突き出す)・アームスイング(腕を振り下ろす)の3つの動きを基本とし、戦うことなく、エネルギッシュに感情、創造力、自分のライフスタイルや生き様を表現する。
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のだそうだ。
正直に言うと、見る前は、こんなに感動する作品だとは予想していなかった。こんな表現方法があるのか!と驚き、感激した。十代のころにこの表現方法に出合っていたらよかったのにと思ったほどだ(自分で踊れるかはともかくとして)。
冒頭、ダンサーが登場する前に、街での暴動と思われる映像が流れる。主に黒人の人たちが映っていたようだ。
ナッシュさんが現れ、声を発しながら動く。まさに、足を踏み付け、胸を突き出し、腕を上下させる。静かな激しさ。怒り。叫ばずに叫んでいるようだ。
光を手に掲げ、音楽がかかる。
衣装はストリートダンスでよく見られるだぼっとした服。どちらかといえば一般的には男性が多く着る服だろう。ナッシュさんの髪は短く、表情は険しく、照明が暗いので、知らないで見ていたら男性と思うかもしれない。おそらく狙ってそうしているのだろう。この後の展開を見ると、そのことがはっきりする。
上の服を脱ぎ、黒いスポーツブラだけの上半身をあらわにする。そのまま踊り、今度はズボンも脱いで、黒いパンツになる。あえて女性としての体をここでは強調して、いわゆる「男性らしい」とされる面も「女性らしい」とされる面も両方持っていることを表しているのだろうか。表現する体としては実は男も女もないし、どちらかである必要もない。
床に仰向けになり腰を浮かせて動かす様子はセクシーだが、なんだか悲しそうに見える。床で泳いでいるようにも見え、美しい。でも悲しい。
フランス語の言葉が音声で流れる。
ナッシュさんが床に座って映像を眺める。映っているのは、全裸の彼女自身。攻撃的な動きと無防備な裸体の対比。
床に置いてあった上着を拾い、腰に巻いて結んでスカートのようにして踊る。
光が差し、声を出さずに叫んでいるような表情に見えた。これまでたびたび行ってきた、客席の方に正面向きになって、両手を上げて壁をたたくような動きをする。壁があって、逃れられないのだろう。そのまま暗転。
涙がにじんだ。こういう怒り、悲しみ、焦り、苦しみ、不安をこのようなダンスで表現できることを発見させてくれたナッシュさんに感謝する。私にとって新しいダンス体験だった。ナッシュさんがダンス(クランプ)を志すきっかけになったというドキュメンタリー映画『RIZE-ライズ-』もぜひ見てみたい。
※下記画像は下記サイトより。
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