メルラン・ニヤカム「空は翼によって測られる El cielo se mide por alas」あうるすぽっと、「アダルト版 ユメミルチカラ」東京芸術劇場

プロのダンサーではない出演者が大半の公演で、いわゆる「コミュニティーダンス」と呼ばれるものだが、振付を担当した振付家・ダンサーのメルラン・ニヤカム氏があまりにすてきだったので、取り上げる。


<「空は翼によって測られる El cielo se mide por alas」>

メルラン・ニヤカム振付。SPAC-ENFANTS(スパカンファン)出演。

SPACが2010年からニヤカム氏を迎えて行っている中高生によるダンス公演。せりふや歌もある。アフリカ出身の振付家を迎えているのが素晴らしい目の付け所。

出演者それぞれの特技を披露する「発表会」と、世界各地の音楽やダンスを見せる「見本市」という要素がベースにありながらも、全体として「魅せる」作品に仕上がっている。

「天上の寄宿学校」を描いているよう。

「アダルト版 ユメミルチカラ」と共通するのが、「疎外感」と、仲間を求める欲求。

太鼓のバチのような日本の棒で床を叩いてリズムを取るのも、2つの公演の共通点。大地と交信しているみたい。

舞台装置や照明も凝っていて驚いた。

公演後、観客も巻き込んで、ニヤカム氏の音頭でダンス。楽しかった!ニヤカム氏は、ダンスをみんなの手に取り戻すために、公演ではいつも観客と踊るのだそう。


<「アダルト版 ユメミルチカラ」>

メルラン・ニヤカム振付。メルラン・ニヤカム&55歳以上の女性ダンサー出演。

ニヤカム氏は日本語のせりふも言いながら、お茶目に女性たちを引っ張っていく。女性たちは自然体でとても楽しそう。高校生から通勤地獄の社会人、そして高齢者へと変遷。

最後は理想郷みたいになって、みんなで天国へ召されたのかな。意外と悲しいラストに思えた。壁に投影されたニジンスキーの「牧神の午後」の写真も、「かなわぬ愛」も思わせる。


<東京芸術祭2018"つながる"プログラムトークセッション第3回【世代】>

メルラン・ニヤカム、永田巳茉彩、太田垣悠。

ニヤカム氏「戦争や原爆など深刻なテーマを扱いながらも、ユーモアも入れて表現したい。プロのダンサーはお金をもらうからプロだが、アマチュアのように楽しんで踊ることを忘れがち」

ニヤカム氏「笑顔は人を一番美しく見せ、天国は一人一人の笑顔の中にある。自分がまず笑顔になってその笑顔を美しいと思わなければ、人から美しいと思ってもらうことはできない」

ニヤカム氏はいつも笑顔なのだそう。それは決して能天気でおめでたい人ということではなく、つらい経験を経てきたからこそ、強固な意志でもって笑顔でいるのだと思う。

と思いながら話を聞いていたら、ニヤカム氏は、祖母から、笑顔でいることが大切だと教わったと語っていた。ダンスでは、楽しむこと、喜びや幸せが大切だと言っていた。ニヤカム氏の踊りからそれは伝わってくる。

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